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2005.01.06

ニームの木は地球を救う①【抄訳】

A Tree For Solving Global Problems (ニームの木は地球を救う)
出典:National Research Council (USA)
著者:Eugene B. Shultz(ワシントン大学教授)

1.総論
 ニームの原産地はインドとミャンマーで植物学的にはマホガニーの仲間である。高木で樹形は樫の木のように広がり、ニセアカシアに似た香りの蜜を持つ白い花をつける。葉はクルミやトネリコに、実はオリーブに似ている。落葉せず一年中緑陰を提供してくれるので、熱帯のインドでは昔から裏庭や市場、道路沿いに植えられてきた。
 インドのほか西アフリカにも移植され、緑陰の提供や薪の供給源、さらにマラリア治療薬として利用されており、ソマリアからモーリタニアにいたる国々ではサハラ砂漠の南下を食い止めるのに役立っている。

 このようにニームは条件が悪い場所でもたくましく育つ丈夫な木であるばかりでなく、特筆すべき特徴は農業や家庭での害虫駆除に優れた効力を発揮することである。実際、昆虫学者の中には「ニームは安全な天然殺虫剤の新時代をもたらすだろう」という人もいる。
 ニームの実や葉からの抽出物は多くの種類の害虫を攻撃するが、人や動物や益虫には害を及ぼさない。生物分解性があるので作物や土壌に残留することはなく、害虫に遺伝的な抵抗性を生じることもないので、化学殺虫剤に代わる理想的な殺虫剤ということができよう。

 ニームの優れた害虫駆除剤になるということは昔から知られており、インドの農民はニームがバッタの周期的な襲来を防ぐことを知っていた。このことが世界的に知られるようになったのは1959年で、ドイツの昆虫学者ハインリッヒ・シュムッテラーがスーダンで空を覆い尽くすバッタの大襲来のなかで、唯一被害を免れたのはニームだけであったのを目撃したのであった。
 さらによく調べてみると、バッタは群をなしてニームに留まるが、食害をせずに離れてゆくことが分かったのである。それ以来、その理由を明らかにするための研究が多くの研究者により続けられてきた。

 これまでの研究の結果、ニームの抽出液は200種類以上の昆虫、ダニ、センチュウ、菌類、バクテリアおよび数種のウィルスに作用することが明らかにされた。
 例えば、インド、イスラエルおよびアメリカでは棉(わた)やたばこの害虫に、トーゴ、ドミニカおよびモーリシャスではキャベツの害虫に、フィリピンでは米の害虫に、ケニアではコーヒーの害虫の駆除に成功した。さらに貯蔵中のトウモロコシや豆での試験の結果、10ヶ月間防虫効果を発揮したのである。

 アメリカ農務省の実験では、大豆の葉の半分にニームエキスを散布してマメコガネの入った容器に入れたところ、散布した葉片は無事だったが、散布しなかった葉片は48時間以内に葉脈を残してすべて食い尽くされてしまった。
 またオハイオでのほ場試験の結果、ニームエキスを散布した大豆は14日間何も被害を受けなかったが、散布しなかった大豆は多種多様な害虫に一晩のうちにやられてしまったのである。

 ニームは複数の活性成分を含んでおり、状況により様々な働きをする。化学的にはステロイド化合物の遠い親戚にあたり、炭素、水素、酸素だけで構成されており、化学殺虫剤に見られるような塩素、硫黄、窒素といった元素は含んでいない。

 ニームエキスの害虫に対する作用はユニークなもので、害虫に対して直接殺虫効果を現わすのではなく、害虫は摂食や変態や繁殖ができなくなって害を及ぼすことができなくなるのである。
 アザディラクチンはニームエキスの主要な成分であるが、幼虫の脱皮や変態を抑制する作用があり、幼虫はサナギになれずに死んでしまう。また強力な摂食阻害効果があるので、幼虫は餓死してしまう。
 サラニンもニームエキスの成分であるが、害虫に対して忌避作用があり、ある種の害虫に対しては化学薬品の「deet」(diethyl toluamide)より忌避作用が強い。「deet」は家庭用のほとんどの防虫剤に含まれている成分である。

 ニームエキスには主要な成分が4種類あり、その他20種類もの成分を含んでいるため、このブレンドは驚異的な性質を持っている。すなわち単一の化学殺虫剤では連用により害虫に抵抗性を発達させるが、ニームエキスでは各成分がそれぞれ別個に害虫の作用点に働くため、遺伝的な抵抗性のい発達はみられていない。ある実験ではコナガを35世代続けてニームエキスにさらした後でも、感受性の変化はみられなかった。

 もう一つのニームエキスの重要な性質は、その成分が植物に吸収され植物体の全体に浸透移行することである。これはまた希釈液を土壌に施用する方法でもよい。成分は根から吸収され、茎や幹を通って植物の上部に移行し、植物の内部から保護するのである。
 実際に米、小麦、大麦、サトウキビ、棉(わた)、トマト、菊などで試験の結果、この方法で作物を10週間にわたり害虫の被害から守ることができた。
 この方法では成分は植物の内部にあるので、降雨で洗い流されることはなく、ミツバチや天敵に影響を与えることもなく、また新しい伸長した枝葉でも害虫の食害から保護される。

 さらにニームエキスの重要な性質は、恒温動物に対してほとんど毒性を示さないことである。
 事実、ガーナのアクラ平原ではニームの果実が鳥やこうもりの主要な餌となっており、果実を食べた鳥やこうもりが中毒した様子は全く見られない。
 またニームエキスを塗ったネズミは普通のネズミよりも食欲が旺盛になり体重が増える。

 ニームエキスは発ガン性物質を検出するエームズテストでは、何ら突然変異原性を示さない。
 またインドでは昔から穀物倉にニームの葉を入れてコクゾウムシの被害を防いできたので、インドの人々は何世代にもわたって多少とも日々ニームを食べていたのである。

 ニームから作られる製品には人間の健康に役立つものがある。
 インドの人々は昔から「噛み棒」を使う習慣があり、これがインドでは白くて健康的な歯の持ち主が多い理由であるといわれている。インドでは毎朝1本の枝を切り取り、その端を噛んでブラシのようにして歯や歯茎を磨く。一番人気があるのはニームの木で、これには科学的な根拠があるようだ。ニームの枝には強力な防腐力を持つ化合物が含まれていることが明らかとなっている。
 ドイツでの研究でニームは虫歯予防だけでなく、歯茎の炎症予防と治療に効果があることが証明された。現在ドイツやインドではニームは人気の高い練り歯磨きの成分として使われている。

 種子から絞った油は強烈なニンニク臭がある。そのままでも熱源や潤滑油として利用できるが、精製すれば不快な臭いは消え、石けんや化粧品、消毒薬として利用されている。
 絞り粕の「ニームケーキ」は有機肥料として有用であり、土壌線虫や土壌害虫の被害防止に役立っている。インド南部のカルダモン生産農家は「ニームケーキ」は市販の線虫防除剤に劣らない効果があるといっている。

 これまでに述べたニームの素晴らしい性質は、まだ一部の人々に知られているに過ぎない。今後さらに新たな発見があったり、研究が進展すればさらに注目を集めることとなろう。

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コメント

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投稿: xebp mljo | 2007.06.22 05:21

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