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2006.12.13

奥田頼春氏の国際ニーム会議見聞録

Okuda 中国・昆明で開催された国際ニーム会議には、奥田頼春氏(「農のよろずや」、元静岡県農林水産部技監)も参加されました。奥田氏は、今回の会議および現地視察の感想を「農の風景(平成19年1月号)」に掲載する予定で、その一部を当ブログに掲載させていただくことになりました。以下に奥田氏の原稿を紹介します。

 ニーム(インドセンダン Azadirachta indica 熱帯・亜熱帯性常緑高木20~25m)は、インドのアーユルベーダーには欠かせない神秘の薬として古くから珍重されてきました。ドイツの昆虫学者がアフリカのスーダンで「イナゴがあらゆる草木を食べつくしたのにニームだけは食べられなかった」ことに気づき、昆虫にも薬効があることを究明しました。現在、各国でオーガニック資材として活用されています。
 日本でのニームの耐寒性を高めるため、センダン(Melia azedarach 落葉高木20~25m 日本、中国に自生)を台木としてニームを接木したところ、接いたので今後、耐寒性などの試験を行います。
国際ニーム会議2006 中国・昆明に参加
 11月11日から15日まで中国の昆明で開催された国際ニーム会議(主催:UNIDO国連工業開発機関)に出席しました。会議には、ナイジェリア、ガーナなどのアフリカ諸国、インド、パキスタン、バングラディシュなどのアジア諸国、ドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリアから100名ほどが参加しました。日本からは、私達3名を含む5名と中国の女性通訳が出席しました。私達は、長期間、効力を持続するアルカリイオン水で、ニーム成分を抽出し、いろいろな分野に活用しようとしています。今回は、世界のニーム事情と中国での取り組みを勉強するため参加しました。
 会議は、12日から13日が研究発表、14日がニーム商品の展示と商談、15日が雲南省南部でベトナムに隣接する紅河ハニ族イ族自治州にあるニーム栽培園を見学しました。
 研究発表は中国語と英語で行われ、私達は理解力が乏しいので資料をみることとし、この間はニーム栽培、商品の製造・販売を行っている雲南中科生物産業有限会社と宿舎の近くにある雲南民族村を訪問しました。
 14日午後、紅河ハニ族イ族自治州に向いました。高速道路を5時間かけて自治州に着きましたが、高速道路の出口からホテルまで自治州人民政府警察の車に先導され、私達の乗用車2台、バス2台が進みました。沿道の主要な交差点には、警察官が立ち、敬礼で歓迎されましたが、今回は、国際会議であること、中国のアフリカ政策の関連もあるのかという印象を受けました。
 15日の朝早く、自治州人民政府警察の先導により、建設中で他の車は通行していない高速道路を通って、自治州内のニーム栽培園に向いました。
会議の印象と感想
 今回の昆明国際ニーム会議に参加して、現在の中国を見聞し、感じたままを書いてみました。
 1.ニーム関連
 ①今回、一緒に参加された霊芝研究30年の方のお話で、ニーム薬効の主成分であるアザディラクチンがポリフェノールの一種であることを知りました。ポリフェノールはタンニンが皮をなめすごとく、たんぱく質を変性させる性質があることを聞き、ニームが昆虫の脱皮を阻害したり、食欲を減退することからポリフェノールの薬効に通じていることが納得できました。
 ②訪問した雲南中科生物産業有限会社の話では、ニーム商品(農業資材)の価格は農薬の3倍もするので、中国国内ではなかなか活用できなく、日本向けに使用できるよう検討しているようです。
 現在、中国では日本向けの農産物はポジティブリストがらみの農薬問題で、輸出量は3分の1から2分の1まで減少しています。これを解決するため、日本の総合商社は日本向け農産物の生産にニームを使用することを奨励しているようです。
 日本でのニームは、農薬取締法の特定農薬にもなっておりませんから農薬として使用することはできません。国際的には、多くの国で、オーガニック資材として認められております。日本の有機農産物の多くは輸入品で、ポジティブリストによって分析すれば、ニーム成分が検出されます。このため、国際基準に合せた形で、食品衛生法の改正を行い、平成18年5月29日から施行し、「人の健康を損なうおそれのないことが明らかな物質」65品目の中に「ニームオイル」「アザディラクチン」が入りました。
 現在、農業新聞の広告や種苗会社のパンフレットに「ニーム商品」が掲載されるようになりました。いろいろな人の意見を聞きますと、「あまり効果がないのに値段が高い」「ニーム以外のものが混ざっているようだ」などと言われます。折角、国際的にオーガニック資材として認められているニームが、日本では的確に使われなく不評に終わってしまうことのないよう願ってやみません。
 ③中国のニーム栽培園を見ましたが、植栽年限が短く、種子の収穫量もこれからという状態でした。現状では、種子を初め、ニームの収穫物は何らかの方法で外国から輸入しているのではないかと推測されました。
 ④中国のニーム商品の中で、ペット用ニームシャンプーがありましたが、この商品はペットブームの日本でしか普及しないと思われ、日本への輸出が期待されます。
 ⑤ニームの薬効の主成分であるアザディラクチンは、ニームの木、全体に含まれていますが、種子に一番多く含まれています。産地(生産国)により、気候・土質により成分%に大きな差異があるようです。
 ニーム製品を作る場合、主に種子または種子の皮を除いた仁を圧搾したり、その粉末から成分を抽出してニームオイルか成分濃度の高い粉末を生成します。その後、乳化したり溶剤で濃度調節をしてニーム製品を作ります(この場合、抽出液、乳化剤、溶剤が化学薬品であると、オーガニック資材になりません)。
 この製造過程で、ニーム成分を抽出したり溶解したりする方法や、アザディラクチンの成分を測定する装置の特許は、主にアメリカが取得しています。中国でのニーム商品の製造で、この特許問題はどうかという疑問もわきましたが、質問はしませんでした。
 11月16日、広州から成田への飛行機で、日本経済新聞を見ました。「動き出す世界特許(下)」の記事によりますと、先進41カ国で新特許条約を締結するため、東京で実務者会合を持ったようです。中国初め、発展途上国は参加しませんでした。中国は、13~14億人の消費力を背景に、独自の特許制度を設けるようです。
 2.国際イベント開催による飛躍
 昆明の空港から宿泊するホテルまでの行程で、ライトアップされた道路際の植え込みを見ましたが、見事でした。一緒に行きました中国との貿易業務を行い、年10回以上中国と行き来している方のお話では、ここ5年ほどで中国の各都市の緑化が進み、大変きれいになっていると伺いました。
 昆明の国際園芸博覧会を経て、北京のオリンピック、上海の万博など国際イベントを成功させることにより、中国は生活・文化の面で国際レベルに達すること、間違いないと思いました。
 3.中国の国際化
 中国は、ニーム商品の外国への販売に大変力を入れているようです。日本の制度も検討し、国際基準に沿ってオーガニック農産物を日本に輸出してくるでしょう。
 また、オリンピックに参加する外国人が中国の食品、食事の実態から、今のままでは中国産食品を使った食事はしないと言っているようです。農薬や硝酸性窒素、生野菜の洗浄など安全性、衛生面で問題が多いようです。これを解決するため、養液栽培などの栽培方法、減農薬、時には有機栽培を検討しているようです。
 4.外国からの投資
 ニームの栽培、製造、販売を行っている雲南中科生物産業有限会社を訪れ、ビデオを見せてもらいました。その中で、シンガポールから70%の資本参加を仰いでいるようです。 中国は年10%前後の経済成長をしていますから、例えば、世界の貸付金利が5%とすれば、中国の企業経営者はお金を借りますし外国からはいくらでも資金が流入してきます。 
 シンガポールの政府外郭団体は、ニーム投資に成功すれば次は資金需要の多い道路投資にと拡大していくことでしょう。
 5.地域農業(バスの中から感じたこと)
 ①高速道路のバスの窓から近隣の農村風景を見ていました。今は、水田裏作で農地という農地はすべて野菜作が行われていました。夫婦で、また、家族や協同で農作業をしているのどかな風景でした。
 みんな、天秤棒に2つの桶をさげ、柄杓を持ち、鍬とある人は噴霧器を下げていました。いい悪いはともかく、日本の昭和30年代前半の農村風景だと思います。石油が使えなくなった時には、この人達が先頭に立って世界の農業を担ってくれると思います。
 ②自治州人民政府警察の先導で、建設中の高速道路を通ってニーム栽培園に向いましたが、途中、数キロにわたり、棚田や段々畑が続くところがありました。人の英知で、生活するため、これだけの棚田を作ったのかと感心しました。よく見ると、所々に崩落した所があり、収入を得るために離村したのかなとも感じられました。高速道路が開通すると、離農する人が増え棚田や段々畑の維持、管理はどうなるのか心配です。
 ③バスに乗っている時間が長いので、途中のガソリンスタンドで、トイレ休憩をしました。隣の丸太小屋で、早速、小型のバナナを買いました。長さ10cmほどのバナナが80本くらいあり、5元です。各人が満腹になるほど食べましたが、バスを降りる時にまだ、残っていました。農家の人達は、この日いくらの売り上げになったのでしょうか。
 まだまだ、環境や水資源のことも書きたいのですが、この辺で終わります。
 現在の中国を見ていますと、私には「経済が今まで培った人智を越してしまった」と思えてなりません。中国に続いてインド、ベトナムが経済を追っかけます。もうこの勢いは止まりません。
 日本に帰ってバンブー農法畑を耕しながら、「やっぱり今、私達に大切なものは、地域の環境、生活、農業だ」と確信しました。地域の資源が循環する活動を進め、10年後、20年後をめざしたいものです。

【参考文献】
 ①「中国が世界をメチャクチャにする」ジェームズ・キング著
   栗原百代訳 草思社 平成18年
 ②「植物のくれた宝物 ポリフェノールのふしぎな力」梅田達矢著
   研成社 平成13年
 ③「雑報 縄文」NO.233 18年11月 
   編集・発行 千葉市内 鈴木厚生

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