連載『ミラクルニーム-その秘めたパワーを探る-』

2004.12.14

今年は「ニーム飛躍の年」(2004.01)

国内・海外とネットワーク-環境問題解決の切り札-
 これまで11回にわたりニームに関する国内・海外の情報を紹介してきた「ミラクルニームーその秘めた可能性を探るー」。今回でちょうど連載丸1年を迎えるにあたり今回が最終回となる。最後の連載は、日本ニーム協会の稲葉眞澄会長に、昨年一年を振り返っていただくとともに、今年のニームを取り巻く状況はどのように推移するのか、インタビューで聞いた。昨年はマスコミで取り上げられることが増え、また海外とのつながりが深まるなど、「ニーム普及元年」と表した稲葉会長。今年は昨年までの活動と実績を踏まえ、それが実を結ぶ「ニーム飛躍の年」と位置付けた。
―NPO日本ニーム協会が発足して昨年は実質2年目だったわけですが、平成15年は日本ニーム協会にとってどのような1年であったとお考えでしょうか。
 稲葉眞澄会長(以下、会長):昨年1年は苦難の幕開けではありましたが、良い年であったと思います。去年の今ごろは中国産冷凍ホウレンソウの残留農薬問題で、一気に特定農薬に認められるかどうか、といった話題で終始していました。しかし、これがきっかけで食品のトレーサビリティーが社会問題になり、安全かどうかは個人が判断し、また探す時代になったことは、“本物”であるニームにとっては追い風であったと思います。
―最近ではニームの認知が広がっています。
会長:ちょうど食の安全性が問われていた頃、4月28日の新聞(日本農業新聞)に「農薬の代打 ニーム」という記事が1面に載ったのが大きかったです。アメリカではすでに、有機農業にニーム資材の使用が認められていることが記事に出たにもかかわらず、農水省からはストップがかからなかった。裏を返せば、悪いものならすぐにストップがかかるが、使用は個人の責任に任されたという判断が出た。日本の有機農業を変える1日だったと思います。この記事が出てからは市町村などの公的な機関や一般の農家などから大きな反響がありました。
―ニームの本も出ました。
 会長:昨年3月に日本でのニームのバイブルと言うべき本を出しました。それまでニームを網羅した日本語の訳本はありませんでした。その意味でニーム普及の大きな一歩だったと思っています。まさに「ニーム普及元年」であった言えるのではないでしょうか。
それから、ニームの線香や足裏シートなど、ニーム協会推奨商品ができたことも、普及につながったと思います。
―海外とのネットワークが広がり、ますますワールドワイドな活動になったと思いますが。
 会長:昨年11月20日にフィリピンにニームの実践農場を兼ねた学校が誕生しました。またインドのブッタガヤに、現地政府から2エーカーの土地をいただき、いよいよニーム原産のインドでの有機農業のチャレンジの機会が得られました。他にもタイ、ラオス、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、キューバ、ブラジル、ケニアといった国々と関係が築くことができ、世界への発信と世界とのつながりを進めることができました。
―日本国内はどうでしょうか。
 会長:地元の方たちの協力もあって、昨秋に伊豆の南伊豆町に日本で初めて「ニームの里」ができました。千葉や熊本など各地からも現在、同じようにニームの里づくりに関して打診が来ており、今年は国内でもニームの里のネットワークができてくるでしょう。
―さて、昨年一年の出来事を受けて、今年はどのような活動を目指しているのでしょうか。
 会長:今年も引き続きニームの普及と会員増加を目指しますが、具体的には、インド・ブッタガヤでの学校建設やニームの植林の早期完成を目指します。また、フィリピンの学校はインターンシップを絡めたカリキュラムにし、いずれはロングステイなどもできるようにしたいと思っています。さらに新たに化粧品など、商品開発も併行して進めてゆきます。
 また昨年は、農業分野や医療分野での活用について研究が始まりました。大学の先生などの協力をいただきながら進めて行くことになりますが、今年はそうした研究のデータ作りをする年になります。そしてニームの化学的な裏付けがより一層進むものと思います。
―今年のニームにキャッチフレーズをつけるとすると、どんな言葉になりますか。
 会長:ニームは幅広くいろんな分野に利用できますが、環境問題解決の切り札と考えてきました。砂漠化防止やフィリピンでは火山灰への植林などでも利用されています。加えてニームは、貧国の人々の仕事づくりにも貢献することを、もっと世界に発信して行きます。全ての意味で今年は「ニーム飛躍の年」にしたいと思います。

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各地に「ニームの里」(2003.12)

フィリピンに実験研修センター開所-大学等連携し有機農産物の開発を-
 ニームは日本以上に海外での評価が高い。アジア、オーストラリア、南米などではすでに大規模な栽培が始まっている。このニームの試験場とも言うべき施設がこのほど、フィリピンに誕生した。NPO日本ニーム協会と、同協会と協力関係にあるNPO熱帯農林技術開発協会(田鎖浩理事長)が共同で設立したもので、11月21日には現地で開所式が行われた。国内でも伊豆や千葉などでニームの拠点ができつつある。各地に広がる「ニームの里」の状況を紹介する。
 このほどフィリピンバタンガス州サントトーマスに、NPO日本ニーム協会とNPO熱帯農林技術開発協会と共同のニーム実験・研修センターが完成した。このセンターが設置される以前から、地元フィリピンの学校との連携は始まっており、火山灰で禿げてしまった山へのニームの植林活動が行われていた。このような交流が基盤となって今回、センターの設置となった。
 実験・研修センターは、4㌶の広さがあり、教室のほか20名の宿泊施設も完備され、今後はフィリピンの大学などと連携しながら、ニームを使った有機農業や有機農産物の開発を実施することにしている。センターのほかにもケソン州ティアオンには関連の農場があり、現在、ニームを活用した完全有機栽培のショウガができるかどうかの実験が行われている。また、現地日本人の農場(500㌶)を実習の場として活用する事も予定だ。
 センター内の畑には、すでにニームケーキ(ニームの茎や葉を切り刻んで団子状にしたもの)を入れた完全有機栽培による枝豆が作られており(年間に5回収穫できる)、畑の周りにもニームの樹が囲むように植えられている。
同協会はフィリピンの次はインドに同様のセンターを設置することにしており、すでにインド政府よりブッダガヤに約2エーカー(約2300坪)の土地の提供を受けた。
南伊豆をニームの里に
 海外で拠点ができると同時に、日本国内でも「ニームの里」が各地にできつつある。
 千葉県四街道市には約2000坪の実験ほ場があるほか、今年10月25日には、伊豆半島最南端の南伊豆町で「伊豆ニームの会(奥田頼春代表世話人)」が発足した。このときの様子が地元、伊豆新聞で取り上げられた。
 「ニームの優れた有用性を知った元県行政センター(下田市)所長の奥田さんが、10年来の知人である一条たけ炭広場代表の山本剛さんに協力を求め、『南伊豆をニームの里』にしよう、と提案。日本ニーム協会のバックアップもあり、今年6月にニームの種を地域のハウスや露地数ヶ所に播き、試験栽培を開始した。9月にはハウスで5割、露地で3割が発芽した。(~中略~)奥田さんは、ニームは有機栽培や土壌改良、健康食品にも活用できる優れものだが、まだ知らない人が多い。広く知ってもらうためにも、ここ『南伊豆をニームの里』としてシンボル的な場所にしたいと語った」と紹介された。
ネットワーク化
 ほかにも熊本や千葉などからも話が舞い込んできており、今後さらに全国的な広がりが期待されている。日本ニーム協会では、こうした各地のニームの里をネットワーク化して、お互いの情報交流的なイベント等も開催したい意向だ。

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ブラジルのニームに日系人の活躍あり(2003.11)

アマゾン地区に100万本超植付け-忌虫効果と土壌の維持・改良-
 今年9月13日~27日まで、NPO法人日本ニーム協会の広報担当・信田光久氏が、ブラジル・アマゾン河口へニームの植付・生育状況の視察を行ってきた。今回の「ミラクルニーム―その秘めたパワーを探る―」は、信田氏のブラジルレポートを紹介する。信田氏の視察は、同協会顧問の大東宏氏が、かつて農業指導を行ったアマゾン地域の最新のニーム状況を確認することを、大きな目的であった。アマゾンのニームには、日系人が大きく活躍していたことが紹介されている。
 アマゾンへは、ロサンゼルス経由でサンパウロに入り、そしてブラジル国内航空へ乗り変え、ブルジリア経緯でベレンに入りました。トータル30時間の長旅です。ベレンに着いてみると、思っていたより暑くない。それでも気温34度。空気が濃い感じで、日陰が涼しい。これなら住む事が出来ると感じた。
 ここアマゾン河口のベレン市は、パラ州の中心で人口130万人、アマゾン地区最大の都市だ。赤道より南緯2度。この地域は日本の6倍の面積を持ち、約1万人の日系人が暮らしている。ブラジルは人口1億7000万人、大きさ851万平方キロメートル。南米最大で160万人の日系人が住んでいる(約20万人は日本及び海外へ出稼ぎ中)。
【アマゾンの地域のニーム】
 NEEM(ブラジルでは、ポルトガル語の発音で「ニン」と呼ばれている)の植付け状況については、ベレンの有力者でニームに造詣が深い清水茂治氏(モトベル社副社長)に聞いた。清水氏は、ベレンの北東80㌔㍍のカスタニーアに600㌶の農地を所有し、牧場・果樹・胡椒等栽培しており、その農場を見学させていただいた。清水氏はブラジルで最もニームを植えている1人である。
来年には2~3培
 現在、アマゾン地区だけでも日系、現地人を含めて100万本以上が植えられている。各農家・林業関係者がニーム苗床で数千から数万を準備しており、来年の雨季には現在の2~3倍の量にもなるかも知れないと話している。清水氏は、ニーム関して現在忌虫効果と土壌維持・改良出来る生産財としての価値が見出せれば多くの農地を持っている苗を植え始めるという。各農家は、平均500㌶の農地を持っており、植付け・収穫は現地人を雇って行っている。
 初めに見学したのは、清水氏が6年前に3000本(3.5m間隔植付け。現在幹は直径約25㌢)のニームを植えた胡椒畑。これは胡椒の支柱として植付けたもので、虫除け効果と支柱木材が不要という経済的に人件費が節約できる。胡椒に日陰は必要ないということで、高さ4㍍以上の部分は全部斬っている(ただし、多くの枝がすでに出ていた)。
 もう1ヶ所のニーム植え付地は、1万本を4㍍間隔で植えており、こちらは全て枝打ちをして、建材利用の可能性を期待している。3年木で幹は直径15~18㌢、高さは平均8~10㍍。さすがアマゾンは生育が早い。ただし、見学した9月中旬は、花も実も成っておらず、11月下旬から花が咲くということだった。11月下旬の結実時には、実を収穫し搾油をして成分分析を日本ニーム協会に依頼したい意向だ。
アセロラ混ぜて散布
 この後9月20日より、トメアス(農村、人口約2万人)を訪問。トメアスはベレン市から南西200㌔㍍離れた、アマゾン最大の日本人の入植地。現在約300家族が農業に従事しており、戦前に入植した人たちは大変苦労を強いられた。戦後は胡椒で大成功したところでもあり、俗に言う「胡椒御殿」が数多く建築された。
 アマゾン地域での最初日本人の成功は、昭和初期のアマゾン河中流地域のジュート(黄麻)栽培だった。この成功がブラジル人から「勤勉・努力・ガンバリ」といった日本人に対する評価を高め、移民の促進になった。ここトメアスは、大東宏先生(日本ニーム協会顧問)が3年間、農業指導に滞在した所。当時はアマゾン地域の日系人農家が、7、8年前よりニームに注目し始めた頃で、現地でニームの実地研究・指導を行った。
 今回お世話になったトメアス文化協会の角田修司氏、南部尚氏ほか日系の方々もニームへの関心度が高く、実・葉・花等を使った商品開発を行なっている。
 実施例として、現在アセロラの実には、ニームの葉を水とミキサーしてから濾し、水で20倍に薄めて散布すると、デンゴ虫・蟻・アブラ虫・貝がら虫が付かない等の効果があるという。雨が降ってもまた散布し収穫まで行なっている。
牛肉の虫除け用
 アマゾン永大木材㈱副社長の佐藤卓司氏(パラ州で宮脇方式により11年前から原始林復活を行っている日系企業)から、ブラジルでのニーム第一人者であると聞き、9月25日、サンパウロ在住のウエキ・シゲアキ氏(商社YAMAMOTO顧問)と面会した。日系人で初めてブラジルの大臣になった方で、長年ニームの効能を研究した人。現在インドよりニームオイルを輸入し、肉牛の虫除けの散布用途品として販売し、実績を上げている。今、ご自身でもブラジリア近郊に1万本以上のニームの苗を植林したばかりで、これからニームオイルを搾油して自社で販売する予定という。(ウエキ・シゲアキ氏以下ブラジル南部で多くの日系人が農工業・商業と多くの分野で活躍。日系人の多くの経済人脈はあり、ウエキ氏も今後日本ニーム協会と協力、情報交換を行い、地球環境に寄与するため、農林・牧畜等のネットワークを創りたいと力強い提案を頂いたこと報告させて頂きます)
 最後に、ブラジルは今後の世界農業の最大供給国になるべく、アマゾン地域にものすごい移住促進を行なっており、その結果、特に大豆栽培のために原始林の大規模伐採が行われ、農薬の大量散布によるアマゾン河の流域汚染が進んでいます。このため多くの原始林が無くなり、先住民インディオの生存を脅かすこととなりました。地球の酸素の供給地であるアマゾンが、年々死滅しかかっていることをテレビ報道で見るたび、不安を感じざるをえません。
 1992年ブラジルでの環境サミットが行なわれた意義は、「共存・唯一の地球の保護」がテーマでした。このことを再び思い認識したいと思います。
 悲観的なことばかりではなく、期待もありうます。それはブルジルの多くの方々がニームに興味を持ち、そして植え始めているということです。ニームが農薬・化学肥料の使用の減少に寄与する事と信じており、この「地球の守り木・サバ(奉仕)・ニーム」としての役目を日本から発信し、広めることが使命と感じています。私たち一人一人が環境と健康に関心を持ち続けることと確信しました。
 現在、大変多くの日本の農業・医療・住宅・食品等の皆さんが、私たちのNPO日本ニーム協会のニーム・ネットワーク作りに関心いただきたいており、また参加をして頂いております。これからもっと大きな波として活動したいと思っておりますので、皆様にこの運動へのご協力を御願い申し上げます。

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衣食住すべての分野で(2003.10)

バラエティーに富むニーム商品
 ニームの有効価値はこれまで様々な分野での使用事例等で紹介してきたが、今回の「ミラクルニームーその秘めたパワーを探るー」では、10月3日に開催された「ニーム大討論会」で展示販売されたニームを用商品を紹介する。「衣・食・住」すべての分野で活用することが期待されている中で、紹介する商品はいち早くニームの効能を取り入れた優れものばかり。農業資材をはじめ、健康食品や石けんなどバラエティーに富んでいる。これからもニームを使った商品が続々と開発されるだろう。ぜひ一度お試しください。
【ニームガーデニングセット((有)ネイチャーワークス)】
 ニームの葉と種子(油を絞る前)の粉砕物が入っており、これを煎じたものを200~400倍希釈で植物に散布する。忌避や殺虫に使う。
【ニームチンキ(㈱マギー)】
 ハワイのニームを使った植物抽出液。直接飲んでも飲み物で割ってもよし。苦味成分が健康増進や風邪のひき始めなどによい。その他、ニームのバスフォームやニームティー等も取り扱っている。
【ヨッテコン(㈱四万十社中)】
 ニームから抽出した100%の濃縮ニームオイル。植物活性剤として植物の種類に応じて、100~500倍程度に希釈し散布する。土壌にも有効で無害で安全な商品。
【ニームハンドメイドセット(岩下環境研究所)】
 ニーム葉、ハーブ、備長炭粉等による手作り石けんキット。ニームの普及や認識を深めてもらうことを狙いに販売している。ニームのうがい薬も作っている。
【アーユルベディック・ニーム石鹸(オーストラリアニーム協会日本事務所)】
 独自の低温抽出法で抽出した、純粋ニームオイルと各種のハーブなどの成分を混ぜた石鹸。人工の添加剤は一切使用しない手作り製品。石鹸のほかニーム使用のオイルやクリーム等もある。
【ニームパウダー(㈱ゆうき)】
 スイス、オランダ、オーストラリアの有機農業認証機関が認証した特殊肥料。粉状の搾油粕でネマトーダ抵抗性が高い。根の周りに土壌と混和して作物を植え付けると樹帯の免疫性が増進する。標準的には1反当たり250kgの施用。この他、液状の「ニームエキス抽出液」もある。
【ニーム香(日本ニーム協会)】
 蚊や昆虫類、ネズミなどを忌避させる天然ニームオイル配合の100%天然素材の防虫お線香。無風状態で約40分間保つ。
【ニーム(ハーブ入り)シート(日本ニーム協会)】
 ニームのエキスが入った足裏シート。貼って寝るだけで足裏のツボに刺激を与え体の器官に影響を与える。足裏だけでなく痛みの感じるところに使っても良い。

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中南米諸国の農業に注目されるニーム③(2003.09)

効率的な木材生産が可能
 乳牛に寄生するダニ防除に注目-伝染罹病者減少の可能性も-

 家畜の放牧場や農場の柵や、木材としてニームを使うことも始まっており、害虫忌避の効果が発揮されている。中でも柵は、これまで原始林を切り出して利用していたため、伐採が少なくなるだけでも、数千㌶規模の放牧場が多い中南米にとっては、巨大な本数になってしまう。このようにニームはまだまだ利用方法が考えられ、一層ニーズは高まるものと考えられる。
4.牧 柵
 中南米の土地価格は安価であるため、広域化していく原始林伐採による牧場の開発は、多くの生物の共存が不可能になる環境つくりであるとも考えられる。このことは地球の環境破壊の道標と表現しても過言ではないであろう。製材効率の低い技術によって、多量の製材屑や鋸屑が生じ廃棄や燃焼され、空気や河川の汚染を誘発している。
 奇しくも、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国際連合環境開発会議(地球サミット)の年、92年の11~12月、アマゾン流域では多量の製材屑や鋸屑を燃やすことによる、あるいは原始林での伐採樹や放牧地の枯草焼却による、乾季の煙は「地獄の煙」と言われるほど、現地の人々を苦しめた。
有刺鉄線不要に
 中南米の原始林の樹をなぎ倒し、1haあたり1500㎡の木材の蓄積を焼き捨て、約300kgの牛を育てるために専念する牧畜業者が居るならば、食肉文明は正常さを欠いており、環境破壊の元凶と言われても弁解の余地はない。中南米の牧場開発は、2000~3000ha規模が多く、規模拡大を狙う企業的牧畜業は10~30万haにも達している。
 牛、馬、やぎなどの家畜類はニームを食さないと言われ、ニームの苗木を現存の柵の間に植え付ければよい。あるいは牧場を設ける前に、ニームを30~50㌢間隔に植え付ければ有刺鉄線不要であり、柵木代及び定置費用は不要となって、想像を絶する多額の費用が節約できる。
 アルゼンチン,ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグア、パラグアイ、ペルー及びウルグアイ国における家畜放牧用として利用されると予想される永年草地面積は、6億8000万haであることが解ったが、牧場の形や立地条件などが不明のため、必要ニーム樹本数は算出できなかった。放牧用家畜の種類と頭数の多い中南米における草地利用面積は、想像に絶する程広大であろう。
5.水源
 現在、アジアやアフリカ地域などの30カ国以上の国々で、水不足と水質汚染が深刻になりつつある。ブラジル・アマゾン河では毎日15兆㌧の水が流れているとされるが水質は問題化しつつある。
寛ぎの場所にも
 カリブ海諸国では、急傾斜地での水源地面積が少なく、山林への植林により山地を水源化して、常時、良質な水供給と洪水を防止する必要がある。斜面、路傍、河川沿いの堤防、集水域、砂地に植栽して、土壌水分の維持、河川流域の調整により洪水などの防災効果を期待する。中南米の大都市では、ポンプによって浄水場から各家庭や工場に水を送り、さらに下水処理場では汚水を浄化している。これら送水や水処理には膨大な電力エネルギーを消費しており、二酸化水素の放出量は想像に絶する量である。
6.地球緑化と温暖化防止効果
 中南米における年平均の森林減少面積は560万haであり、毎年の造林計画面積が明らかになれば、各国の造林計画面積から樹本数は算出可能である。このまま森林面積が減少し続ければ、今世紀末には気温5.8℃の上昇が心配されている。さらに人体に悪影響の熱帯性病原菌の増加も予想されている。地球温暖化防止効果としての気候調整、大気構成のための二酸化炭素吸収量、酸素放出量の測定は可能である。
 ニーム樹の光合成能力に関する情報は未だ見つからないが、森林関係の研究機関に調査を依頼する必要を感じている。杉の例をみると、樹齢50年生の人工林の年間二酸化炭素吸収量は、約12.5㌧/haと言われている。
野鳥が好んでニームの実を広範囲に撒き散らすので、巨額の種苗代、植林作業費が不要であることを協調したい。
7.農民や住民への心理的肉体的効果
 農家、住宅周辺に植えることにより、蚊やハエなどが近づかなくなり伝染罹病者などが減少する可能性がある。日陰での一家団欒、隣近所人同士の寛ぎ場所などにも貢献するであろう。観光地、レクリエーションやスポーツ場などの日陰用樹としても期待される。
8.家畜に対して
 樹下での休息場所、家畜及び牧舎周辺における蚊などへの忌避効果が期待できるばかりでなく、ブラジルのゴヤス州のある酪農家は、乳牛に寄生するダニの防除効果に注目して、すでに1万本以上のニームを植え付けている。
幹内部に薬効成分
 中南米諸国では、10ha当り1.5~2頭の過密放牧のため、草量不足のため草の根まで採食するようになり、この部分に生息する感染型寄生虫や高温多湿を好む多種類の皮膚寄生虫など、専門家さえ把握できないほどの多種類の寄生虫が、多くの家畜類に寄生している。ニームの土壌施用法が検討されて欲しい。
9.野生動植物、土壌に対して
 ニームの花は香りが良く、しかも蜜が甘いので、ミツバチが多数飛来して、良質な蜂蜜を生産する効果は大きい。受粉用昆虫の呼び寄せにも期待できる。またニームの生体からの成分放出効果の例としてアセロラ園での混植により害虫忌避効果が期待できる。
 その他の害虫忌避効果も認められている。病害の拡散防止にも貢献するであろう。野生生物の生育地や生物多様性の保全にも期待できる。さらに土壌中栄養分の貯留、分配、循環などへの貢献度を期待したい。
10.木材生産、樹の用途及びその可能性
 ニームの生長は速く、8~10年生で使用樹齢に達するので、効率的な木材生産可能である。アマゾン地域で材木業に従事している業者からの見解では、用途としては、幹の内部に殺虫、防腐などの薬効成分を含有しているので、シロアリ駆除効果などが期待される。材色は比較的白く、木目が密な材質である。
 木材を次のような最終製品に加工する工業生産能力を養成し、雇用の創出及び収入の増大が期待される。ちなみに日本の産業用丸太の輸入量は、世界の輸入量の30%を占め、熱帯広葉樹丸太の輸入量は世界の45%を占めている。日本の森林は、産業用木材生産に必要な丸太の供給は可能であるが、環境的な観点及び高伐出コストにより、輸入を行っている。
①集成材
 フロア‐台板、家具の内装、下駄箱、箪笥、キッチンキャビネット、クローゼット,造作材、押し入れ内装、カウンター、事務机、食卓テーブルなど。
②製材、集成材
 腐敗土台、エクステリア、外装用など。
③チップ(木屑片)
 パーチクルボード、防腐芳香剤など。
④その他
 丸太、柱、杭、パルプ用材、燃料材(薪、炭)。

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中南米諸国の農業に注目されるニーム②(2003.08)

コーヒー栽培の庇陰樹に中南米で10億本の可能性-防風・防潮樹にも必須-
 今回はコショウ以外の農産物へのニームの使い方とその使用量などについて。中南米の強い日射を緩和させるために、ニームを庇陰樹として活用することを述べており、バナナ、コーヒー、カカオなど様々な作物に利用した場合の使用本数も試算している。その数は莫大な本数となり、多くの面でメリットがあるという。また農業以外にも防風、防潮樹への活用も期待できるとしている。
②バナナ
 日射の強い熱帯では、バナナがココヤシの日陰下で栽培されている例が多い。50%程度の日陰では、果実収量には影響が無く、むしろ日陰樹の下でバナナを栽培することによって、果実収量が2倍に増えたという報告がある。その理由として、直射日光下では斑葉病の発生が多い。
中央アメリカ・パナマのある地域では、快晴日の強い日射に当たったバナナ果実は、厳しい日焼けの被害にあっている。特に大型プランテーションバナナ園の道路沿いや排水用のコンクリート溝の周辺では、終日、強い反射光のためバナナ草本の全相が高温に曝され、大きな被害が生じている。草本ばかりでなく果実の日焼け症状は、商品価値を著しく悪化させている。
コーヒーには200本/ha
 強い日射に当たった果実は、果皮が黄色に変色し、だんだんと黒変してくる。中南米におけるこのようなバナナ被害を軽減するニームの庇陰樹としての仮の必要本数をみると、
【生食用バナナ園】
90万ha×200本/ha=1億8000万本/中南米面積
【料理用プランティン園】
30万ha×200本/ha=6000万本/中南米面積 となる。
③カカオ
 カカオは熱帯アメリカ(ブラジル・アマゾン)の原産であるため、年間雨量2000~2500㍉の地域で生育は良い。庇陰樹によってカカオは強い日射と強風に曝されることから、開放される大きな利得があり、カカオは庇陰樹の下で栽培されるのが普通である。
カカオ園に必要なニーム樹は、150万ha×33本/ha=約5000万本/中南米面積、となる。
④コーヒー
 コーヒーは、アフリカ(エチオピア,コンゴなど系統が多い)の原産であるが、強い日照と強風を拒むので、庇陰樹下での栽培が一般的だ。一般に、コーヒーの作付け本数は、800~1600本/haであり、庇陰樹を5~8㍍おきに混植すると、約200本/ha必要である。ニームの必要本数は、500万ha×200本/ha=10億本/中南米面積、となる。
⑤茶
 茶栽培においても庇陰樹が必要である。日本の茶生産園においては被覆布や網を用いていることから、良質な茶生産にはもちろんのこと、一般の茶栽培においても庇蔭資材の必要性は、古くから認められている。中南米には熱帯性、亜熱帯性緑茶、紅茶などの茶園面積は約8千ha存在するが、各種の茶園が必要とする庇陰樹の栽植密度は不明のため、必要庇陰樹本数は明らかでない。
⑥パイナップル
 品種によって異なるが、粗植した樹陰下での生育は良い。パイナップルの栽培園において、大規模な商業栽培経営園では、パイナップルの単作園(モノカルチュアー型)が多いが、地場市場向けの中小規模の園や自家消費型の規模の場合、ほとんどがココヤシなどの喬木性の間作作物の庇陰樹下でパイナップルが栽培されている。熱帯の直射日光下では、パイナップルの生育にとって太陽光は過飽和になり、葉色が黄色、紅色に変色して、生育に支障が起こりやすい。
収量2倍の例も
 これまでの多くの研究成果に基づいて、ココヤシとパイナップルの両種の大規模栽培経営に成功しているが、樹高の高いニーム樹混植実験が望まれる。
日陰下で収量が2倍に増収した例もあるので、7㍍×7㍍植えの粗植方式として計算すると、中南米においては、4万ha×200本/ha=800万本の庇陰樹用ニームが必要である。
また、ほとんどの永年性作物及び他作物の種苗生産床用に多数の庇陰樹が必要であることも特記したい。
3.防風樹、防潮樹
 風害、風食及び風水害防止樹として、ニームの役割に期待が持てる。適度に吹く風は作物の生長を促進し、病害虫の発生を抑制するなど多くの利点がある。しかしながら、強い風はバナナ、パパイヤ、パイナップルなどに対して過剰な蒸散による生理的な害を及ぼし、葉や株同志のこすれなどで傷付ける場合もある。
 例えばバナナの場合、草本性でしかも葉面積が広いので、熱帯の盆地に栽培されている園では、特に乾季においては、無風に近い状態で強い直射日光を浴びていることが多い。
 ハリケーン、台風など熱帯、亜熱帯で暴風の襲来するところや、海岸部の潮風の飛来する立地、急傾斜地の急速な上昇気流の発生するところでは、作物栽培を行うにあたって、防風林、垣の設置が必要である。空気が動いたり、風が吹かなければ、作物周辺に炭酸ガスの供給がなくなり、光合成ができ難くなるので、ある程度の風の吹く立地が望ましい。
 一方、強い風が吹くところでは、病菌や害虫が風、飛砂で運ばれ、病菌が損傷部から侵入しやすくなり、防除しようとして散布する農薬が風に流されてしまうので、薬剤散布がしにくくなる、などの問題が生じる。
中南米地域の年間暴風襲来回数は、太平洋北東部(中央アメリカ,メキシコなど)10回、大西洋の北西部(カリブ海域諸島,メキシコ東部など)7回であり、膨大な面積の防潮林が必須である。

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中南米諸国の農業に注目されるニーム①(2003.07)

アマゾンの密林伐採を防ぐ
 コショウ栽培の支柱利用-全世界で1200億円のコスト節減に-

 中南米のニーム事情について2回にわたって紹介する。日本におけるニーム研究の第一人者である日本ニーム協会顧問の大東宏氏(元農林水産省国際農林水産業研究センター)に、「中南米諸国の農業に注目されるニーム」をテーマに執筆願った。中南米でのニームの利用方法を中心に、今回はコショウ栽培への利用効果を紹介していただいた。ニームを支柱の替わりに使うと多くの面でコストが削減できるほか、環境保全にも役立つとしてそのメリットはたいへん大きいという。
中南米の環境が世界に
 中南米の環境が世界に地球の熱帯雨林の約半分を占める南米大陸のアマゾン流域は、650万平方㌔㍍(日本国土面積の17倍)の広大な面積があり、森林保護と農業開発に係る諸問題が地球の環境変化に大きく影響しているため、同流域の変化は広く世界の関心を集めている。
 特に、同流域における熱帯森林内に生息する生物の多様性と植物が係る地球の炭酸ガス吸収、固定に関しては、世界の至るところで活発に議論されている。近年、環境問題の中でアマゾン流域の原生林が、過剰伐採と焼畑農業の拡大による破壊で惹き起されていると考えられ、いわゆるエルニーヨ現象の主要因になっているとも指摘されている。
 ブラジル連邦共和国並びにドミニカ共和国では、熱帯森林伐採禁止令が発令され、焼畑農業も禁止されているが、日々の暮らしに追われる現地住民にとって、これら禁止令を遵守することは困難である。アマゾン流域の日系農家の中には、アグロフォレストリー(森林農業)、環境維持型農業技術に深い関心を持っている人も多い。特に熱帯果樹栽培技術向上のためには、単作型果樹園経営ではなく、諸作物との混作や庇陰樹などとの生態的な共存が必要不可欠であることを認識している農家が多い。
 環境維持型農業に課せられた多くの問題点のなかで、特に現地住民にとって多面的な役割を担うであろうと予測される、ニームに関する諸情報に格別の関心を抱く人々も多い。本稿では主として、アマゾンに限らない中南米諸国(図1)での環境維持型農業に貢献できると期待される、ニームのコショウ栽培における庇陰樹としての利活用について記述したい。
 ニームを、コショウの生木支柱として利用することで、これまでの堅木支柱栽培(原始林から膨大な本数の堅い伐採木を割って、木肌をざらざらにして支柱とする)に比べて、自然環境の保持、緑化、土壌保全などに寄与することを期待する。
中南米への導入暦
 今日、栽植の盛んなアフリカの一部の国においては、20世紀初頭に導入され、中央アメリカのパナマや西インド諸島のなかでもジャマイカ、ハイチ、ドミニカ共和国では同世紀後半期に導入されて栽培も盛んである。また同諸島地域のなかには、100年の導入歴史をもつ島嶼部もある。さらに南米ブラジルでは、ニームが導入されてまだ10年しか経っていないが、コショウ栽培に必須な支柱の入手と埋め込み費用が高価なため、ニームのいわゆる生木支柱に対する認識が高まってきた。しかし、現地人のコショウ栽培農家の間では、未だニームを生木支柱として利活用しようとする認識が低いのが実情である。
 熱帯、亜熱帯地域におけるコショウの生態的特徴として、直射日光の50%程度の日陰が、子実(実)の生産に最も適した太陽光線量であることが証明された結果、ニームのような生木支柱の利活用を検討するようになり、ニームの種苗生産に取り組む農家も現れている。また、中南米の多くの国は農業大国であり、多量の農産物を海外向けに生産し輸出しているが、近年の安全性の高い食料需要の高まりのなかで、特に先進諸国への輸出食料産品は、農薬使用量の削減が求められ、また流通前の薬剤処理のあり方が問われるようになってきた。また、現地労働者の健康維持施策が推進されているため、雇用者の農薬管理と散布の際の服装や防毒マスクの着用など、多くの課題を背負いながらの農業が行われるようになってきた。
 さらに、中南米は膨大な家畜用牧柵型放牧面積を有しており、膨大な頭数の放牧家畜類を飼育している。近年、問題となっている家畜飼料への混入抗生物質が人体に及ぼす悪影響などを嫌って、より安全性の高い畜産物の輸出が求められている。同地域のニーム木及びニーム抽出液の農業や畜産業への利活用に対する期待は大きいため、大部分が未だ試作の段階ではあるが、ブラジルではすでに数万本が植え付けられている。ちなみにブラジルのニームは近年、ドミニカ共和国から導入された種子を播種して増殖させたものである。
万能な樹木作物では?
【薬効成分利用:採取果実、葉の利活用】
 農家は採取したニームの葉や果実中の種子から、簡単に成分を抽出することができる。例えば種子からニーム汁(ニームオイル)を絞ろうとする農民は、ニーム樹に登って種子を採取したり、枝から落下した完熟果実を拾い集めて、水中に入れて果皮を洗い流し、種子を圧迫している。ドミニカ共和国では、かつて日本で行われていた手法の一つである「サトウキビ搾り器」や「スルメイカ伸ばし器」のような簡単な器具を、農家が使い始めている。
 ニームの果実汁(種子中の胚)の利用法として、農業用並びに医薬用ともに溶剤を使って抽出し、さらに保存剤の添加などで保存期間を延長させた、天然資材としてのニーム製品が多くなってきている。これら製品は農作物や人体に無害のいわゆる「農業用天然資材」として、多くの国々で取引されるようになってきた。
 ミキサーの使えない現地住民は、ニーム葉をすりこぎで青汁化して、直ちに水で希釈し畑に散布している。あるいは家畜の皮膚ダニやハエを駆除する目的で、ニーム葉を直接、家畜の肌に擦り付ける農家が少しずつ散見されるようになった。
【現在の利活用法の例】
 1.作物害虫の防除と忌避効果に期待
 中南米では未だごく少例の域を出ないが近年、ニームに含まれる諸成分が、コナジラミ、アブラムシ、スリップス、カイガラムシ、シンクイムシ、ミバエ、イエバエなどの害虫の脱皮、羽化、摂食を著しく阻害することが、農民の間で認められるようになっている。現地で発生する多くの害虫に対するニームの散布効果が期待されると報じられたことから、先進的な日系農家では、野菜や果樹害虫の駆除に、ニーム果実の搾り汁や葉の青汁を散布することで効果が認められつつある。
ニーム需要増加
 特に消費者からの要請により、有機農法を目指す農家数は増加しつつあり、安全野菜、果物、牛乳並びに肉類などの畜産物などの需要と供給量が増しているので、農作物や家畜に対するニーム製品の需要は年々増加するであろう。有機農法の一例として、土壌中の病原菌、センチュウ類などの害虫防除を期待して、雑草や家畜の排泄物の中にニームの葉を混入して、堆肥を造りアセロラ、トゲバンレイシ、クプアスー、パッションフルーツなどの果樹園やキュウリ、ナス、トマト、葉菜類などの野菜園に、施用する試みが増えている。
 ブラジルでは、数万本のニームの苗木が植え付けられたが、未だ結実齢に達していない木も多く、着果した木はあるものの、果実生産量が少ないために、ニームの搾り汁(オイル)が生産できないのが現状である。現在、ブラジルはグアテマラからニームオイルを1㍑当り30USドル(約3600円)で輸入している。ニームの絞り汁(ニームオイル)は高価な製品ではあるが、安全な天然の害虫防除資材として、農家、消費者、学者、政府関係機関の間で人気が上昇しつつある。
 研究熱心なあるブラジルの農家が、輸入したニーム絞り汁と葉から抽出した液を、アセロラ園(3ha、1800本)に散布したところ、高い効果を得ている。これまで15日間隔で散布していた農薬散布が40日間隔となり、殺虫剤散布は17回から8回に、殺菌剤散布は14回から2回にそれぞれ減少した。さらにこの農家は、ニーム葉から抽出液をとる作業を省くため、アセロラ園内にニームの幼木を混植あるいは園の周囲に栽植して、害虫の飛来忌避を目的とするとともに、暴風効果も期待している。
 このような試みは他の果樹園にも広がりつつある。ブラジルのある州では、西洋梨やリンゴ園でも同様な作付けが行われている例もある。ニーム各部位の薬効成分の利用以外に、現実には次に記すようにニームを利活用している農家があり、将来への利活用の可能性をも検討されている。
分解と腐食を促進
 2.作物とニーム庇陰樹との共生
 庇陰樹は、強い日射と強風に曝されている作物を開放させるという大きな役割を持っている。また直射日光を遮ることによって、作物間の気温を緩和しさらに湿度を平均化して、例えばニームから落下した古葉や作物、果樹類の落ち葉の分解と腐植を促進し、土壌の物理性や化学性の改善に寄与している。植付け後間もないしかも丈の低いコショウの幼苗期や葉菜類などの単作園では、裸地の畝間にスコールのような大粒の雨粒が直撃すると、雨が土壌表面を流れて土砂が流失する。また土壌表面を流れる水の量が増えるので、地下への水供給量が著しく減少する。
土砂流亡防止に
 しかし庇陰樹を植栽すれば、浸透できる土壌の構造形成も伴ってくる。庇陰樹の葉や枝などによって、地面に当る雨粒の強度を弱めるので、土砂流出も防止することができる。さらに庇陰樹によって、土壌表面温度を下げるので、土壌からの水分蒸発も和らげる効果も期待できる。特に熱帯降雨林地帯においては、庇陰樹は周年の驟雨や豪雨などによる土砂流亡防止に役立っている。
 33の中南米諸国(ラテンアメリカ、カリブ海地域諸国)のうち、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグア、パラグアイ、ペルー及びウルグアイ国で庇陰樹を必要とする作物園面積について、期待されるニームの仮需要本数を検討した。
 ①コショウ中南米のなかで、ブラジルではポルトガルの植民地時代にコショウが導入、栽培され、販売面でも大きな収益を得たものの、現地人によるコショウ栽培は間もなく衰退した。70年前に東南アジアから導入されたコショウは、入植日系人によって栽培され続けて現在に至っている。コショウ価格の高騰によって、農家の繁栄期を迎えたが、本格的な栽培暦は東南アジアに比べて短い。同国の日系農家の努力によって、コショウ栽培による利益の大きさが、ドミニカ共和国の日系農家にも伝達され、同国には30年前に導入されている。
 ブラジルに次ぐコショウ生産国であるメキシコへのコショウ導入の歴史は定かでないが、スペイン人の支配下にあった頃に導入されたのであろう。ペルーへの導入期も明らかでないが、大量生産されるようになったのは、日系農家の入植時以降であろう。コショウ栽培例から、コショウに必須な支柱としてのニームの利活用が期待されるのは、堅木支柱(熱帯密林から伐採した硬い木を割って、木肌をざらざらにして支柱とする)よりも、その入手と埋め込み費用が大幅に節減できることである。
 近年、アマゾンの密林樹木の伐採が禁止され、堅木の入手が困難になりつつある。直射日光の50%の日陰下でコショウ生産量は最高となる利点があること、またニームをコショウ園内外へ植え付けることによって、諸害虫の侵入が阻止できるのでは、などニームの庇陰樹としての可能性に期待がもたれていることは、前述のとおりである。
1200億円節約
 世界の貿易規模で認められている中南米における主要コショウ生産国は、ブラジルとメキシコの2カ国である。この2ヶ国の栽培面積(ブラジル3万ha、メキシコ1300ha、計3万1300ha)から、ドミニカ共和国の標準例1800本/haから、ニームを支柱に用いた場合の経費を計算すると、左記の通りとなり、中南米2カ国のコショウ栽培国でニームを支柱として利用すれば、92億6000万円、全世界では1200億円近い費用が節約できる。
環境保全に貢献
 また密林の樹木を伐採しなくて済むことから、地球の自然環境保全に大きく貢献することは確かである。このようにニームを生木支柱として利用すれば、慣例の堅木支柱に比べて、多額の経費節約が確実であるが、その他のニームが果す経費節約要因は下記が考えられる。
 ①1度定植すれば、腐敗することなく、資材の購入費や埋め込み費用が不要である。
 ②特に急傾斜地への搬入費の節減費が大きい。
 ③コショウの吸着根が生木に絡みつき、樹皮から水分が供給される。
 ④生木は、コショウへの庇蔭効果が高いばかりでなく、日陰によって畝間の雑草の繁茂が抑えられて、堅木栽培園における裸地状態の土削りに伴うコショウにとって壊滅的な土壌病原菌(フザリウム菌)のコショウ根への侵入を防ぐことができる。除草費用の節減額も大きい。
 ⑤生木の枝葉を、畝間に敷いて雑草発生と土壌水分の蒸発を防ぐ。
 ⑥さらに花、果実、葉、樹皮はニーム成分の活用源、樹木は材木として利用する。
多くの利点がある
 このように、ニームを生木支柱として栽植すると、多くの利点があることが理解できるが、収量に関しては表1のようである。堅木支柱栽培と生木支柱栽培との間及び品種間に差があり、一定の傾向は認め難いが、生木支柱がコショウの生育や収量を著しく阻害しているとは考え難い。しかし堅木支柱栽培と生木支柱栽培との間の生産費を比較してみると、生木支柱栽培においては堅木支柱栽培の8分の1の生産費であり、ニームなどの庇陰樹活用の有利性が明らかである。
大きな利益が期待
 したがって堅木支柱栽培と生木支柱栽培との間の収益率をみると、生木支柱栽培においては両品種ともに収益が高くなっている。ニームを支柱として利用することで、収量の多少を吟味する以上の大きな利益が期待できる。ニーム樹は生育が速く、しかも垂直に伸長し、
材質も良く、高価に取引されると予想されている。後記する如く木材業者の考察では、ニームはコショウの老齢時に用途の多い高価な木材とし、販売可能であると予測している。

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インドネシア・バンドン工科大学-葉と種でふけ撲滅シャンプー開発-(2003.06)

有力紙が研究を紹介-製薬会社も生産に興味-
 世界各地でニームの有効性が評価され認識が高まっている。すでにアメリカでは家庭園芸用の資材が売り出されているほか、有機農業に使用可能なものとして定着している。今回の「ミラクルニームーその可能性を探るー」では、こうした海外での評価事例を紹介する。第1回目はインドネシアのニーム事情だ。ニームの原産地インドから近いインドネシアにおいてもニームの認知はそれほど深くない。そうした中で、今年3月にインドネシアの全国的な新聞に大きくニームについて、「『ふけ』を撲滅するニンバ(ニームのインドネシア語の言い方)の抽出物」というタイトルで掲載された。この記事を紹介する。
 インドネシアでのニームは、政府がインドから街路樹用の樹木として導入したのが始まりで、インドネシアの人々にとって、「ニームと言えば街路樹」程度の認識で薬効があるということはさほど知られていないのが現状だという。
今回ニームが紹介されたのは、全国有力紙の「Pikiran Rakyat」という新聞。週に1回、様々な分野の研究記事が掲載されるコーナーで、今回のニームについてはバンドン工科大学(日本での東大・京大に相当)による研究結果が、「『ふけ』を撲滅するニンバ(ニームのインドネシア語の言い方)の抽出物」というタイトルで、今年3月6日号で紹介された。記事の内容は以下の通りだ。
ふけはカビが原因
 ITB(バンドン工科大学)の研究者は、天然ニンバの葉と種の抽出物から「ふけ撲滅シャンプー」を作ることに成功した。この研究は99年から始まり、当初、ニンバの研究目的は天然の殺虫剤を探すことだったが、「ふけ撲滅シャンプー」も開発された。なぜなら、昔からインド人は頭のノミを防ぐためにニンバを使っていた(葉と種から油を絞りこの油を頭に塗る)ためで、それをきっかけにノミよりもっと小さなバクテリアやカビにも効くのではと考え、ニンバの抽出物を使った。それまでにニンバの油はバクテリアやカビを防ぐことは分かっていたが、「ふけ」を無くすことはまだ解明されていなかった。「ふけ」はpytirosporum ovale というカビが原因で増殖し、鱗のように頭皮を覆う。特に湿気、高温、熱帯に住む人々(例えばインドネシア人のような)や、頭皮に油分が多い中年男性に多く現れる。
ウサギで実験
 ニンバシャンプーは、葉と種を洗ってatsiriという植物油を混ぜ、合成着色料や香料、保存料は一切使われていない。ニンバシャンプーの成分は、サポ(石鹸)ニンバ(3%)、ニンバー油(3%)、atsiri油(1.5%)、ニンバー葉の抽出(1.5%)。
 このシャンプーをウサギで実験した。ふけを増殖させたウサギの毛を数日に一回、ニンバシャンプーで洗った。14日間で抜けた毛が回復し、ふけも無くなったという結果が出た。その後、多くの人が自発的にこのシャンプーを試したところ、人間にも効果的であった。何回か繰り返して使うと効果があるとその人々が説明した。
このニンバシャンプーは、インドネシアの特許庁から特許番号を受け取り、現在インドネシア厚生省で登録手続きをしている。
絶対量が少ない
 さらに、ITBが発見したニンバの抽出物シャンプーは、現在大量生産の準備をしており、他メーカのふけ防止シャンプーと競争ができると、ITBの研究長のSuswini氏が説明した。インドネシアのいくつかの伝統的な製薬会社もライセンスシステムでニンバシャンプーを生産すると興味を持っている。しかし、今まだ実現していないのは、シャンプーの原料となるニンバ絶対量が少ないからである。ニンバという木は、実をつけるまで3~5年まで経かり、それから収穫できるようになる。生産木としては一本の木から50kgの実が収穫できるまで10年位かかってしまうからだ。
今後、ITBが大量生産を始めるまでにはいくつかの条件を満たさなければならない。それは、インドネシア厚生省で厚生許可をもらうために製品を登録しなければならない。
それが取れたならば、このニンバシャンプーはITBの大きな利益部門になる。
 このようにインドネシアでもニームの研究が進められており、今後も様々な分野でニーム活用法の発見・発明が期待されている。

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カメムシ、イナゴ、線虫予防に(2003.05)

手応えつかんだニーム-1日も早いニームの有機認証を- 
 ニームを使った農業資材を製造している、秋田県大潟村の㈱ゆうきの村上彬社長を訪ねた。村上社長は有機農業実現のため貪欲なまでに様々なものを試してきた。ニームも自らミャンマー、インドを訪れ探し出したほどで、有機農業のための努力は惜しまない。逆にそれが当たり前であるかのように平然と話していた。そんな村上社長にニーム農業資材の可能性について詳しく聞いた。
 取材した4月中旬の大潟村は、ちょうど田植え前で活気に満ちている時期だった。田んぼのあちこちではトラクタで耕したり肥料をまく姿があった。当然関係者には忙しい時期で、㈱ゆうきの倉庫からは商品を運び出す業者の姿が見られた。
 村上社長は現在、61歳。今から35年前に大潟村にやってきた。㈱ゆうきの社長であると同時に農業者でもある。約20㌶の田畑で経営していてニームの試験もそこで行った。これまでにニームの資材を使って2回米を作った。今年は3年目となるがこれまでの試験でかなり手ごたえを掴んでいるようだ。
自らミャンマーへ
 村上社長とニームの出会いは4年前に遡る。安全な米を作るため、安全な害虫駆除の方法をいろいろ模索していた時に、東南アジアには何か害虫に効くものがあるだろうと考え、自らミャンマーへ赴きその時はじめてニームを知った。原産地がインドと知りさらにインドにも渡り、現在はインドからニームを仕入れ液剤に再加工して商品化している。またニームパウダーをメインの速効性米糠醗酵肥料に混ぜた商品もある。
村上社長曰く、「天然のものとしては害虫防除に利用できるレベルだ。パウダーは線虫に良く効く」と、ニームの効き目を高く評価した。化学合成農薬ように100%の効き目を天然物であるニームに求めること自体に無理がある。
実際には、カメムシ予防に田んぼの畦に1回、イナゴ予防にも1回撒いた位で、栽培期間中2回程度(いずれも液剤)散布しただけだった。もともと大潟村は風の通りが良く病害虫の発生が少ないところではあるが、それでも効果はてき面に現れた。また、ニームパウダーが入った米糠肥料は土壌中の線虫に良く効く結果だった。
利用者の支えに
 「これからの時代は安全でなければ米は売れない」と断言する村上社長。製造する「速効性米糠醗酵肥料」は有機認証団体のJONA(日本オーガニック&ナチュラルフード協会)にも安全性が認められ、有機栽培に使用可能な資材として認証を受けており、大潟村内の利用者の支えとなっている。ニーム資材については、農水省の見解で特定農薬への判定が「試験事例が少ない」ということで保留になっているため、JONAはまだ有機栽培に使用可能な資材としては認証していない。ただし、使うことは問題ではない。
社長の安全へのこだわりの先には有機栽培の実現がある。大潟村の稲作では広大な栽培面積をカバーするため、化学合成された除草剤に頼らざるを得ない状況があり、生産される米の表示は「減農薬」になってしまう。村上社長によると、病害虫の問題はニームで対処できるため、除草さえクリアすれば大規模栽培でも有機栽培の米を作ることができるという。
矛盾を指摘
 最後にニームを取り巻く矛盾を強く指摘した。「オーストラリアやアメリカなどでニームを栽培に使用した農産物は、その国で有機栽培農産物と認められるため、日本に輸入される時も有機栽培農産物として流通する。でも国内でニームを使って栽培すると有機栽培とは認められない」と。同じように栽培しても同じように評価されない現状に村上社長は首を傾げた。一日も早いニームの有機認証が求められている。

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ニームオイル 413種類の害虫を駆除(2003.04)

まったく欠陥がない
 3月12日に行われたニーム講演会「ニームについて語る」で講演した大東宏氏(元農林水産省国際農林水産業研究センター企画調整部連絡調整科長)の話を紹介する。大東氏はこれまでの研究や経験で目にしたニームの活用について話し、ブラジルでのコショウ栽培に活用した事例を中心に展開した。その結果にまさに「ミラクル」と実感したという。なお、講演会には100余名が集まりニーム普及と認知拡大に向けて大きな一歩を踏み出した。主催者の日本ニーム協会稲葉会長は「夢と希望と責任をもって世界へ広める」と日本のニーム元年を宣言した。
  大東氏は、自ら赴いたブラジルでの日系人のコショウ栽培の体験と研究を中心に話を展開した。
 日系移民が持ち込んだわずか2本のコショウ苗は、今では800万本にまで増加しました。日系農家の方たちがコショウを栽培して大成功を収めてきたのですが、大きな誤算も出ました。それは日本人の「常に耕し、常に草を取る」という勤勉さ几帳面さでした。
 ベトナムやタイのコショウは20年の寿命があるのに、勤勉ゆえに4~5年で全部枯れてしまうのです。これではということで様々な対策を打ってきたのですが、なかなか解決しません。日系の農家の方に実際にベトナム、タイ、インドネシアに調査に行ってもらったところ、粗放な栽培でも寿命が長いことに大変驚いて帰って来ました。
 また、もう一つの問題としてコショウを栽培するときに、茎の支柱にアマゾンの木を何百万本も切り出しています。1㌶当たり1800本打ち込みます。打ち込む費用も半端な額ではなく、べらぼうにかさみます。これが森林伐採の原因の一つにもなっています。
全世界で2千億円
 2つの問題を解決するものとして登場したのがニームなのです。支柱の代わりにコショウの脇にニームを植えます。森林伐採することなく環境を保全し、同時に、コショウを長持ちさせます。
さらにニームの木を材木として家具や建材などに使い、材木生産を兼ねている人もいます。ブラジルではニームの苗は1本50円くらいで経費はべらぼうに安く、成長も非常に早いので数多くの利点があるわけです。コショウ栽培農家向けにニームの苗木を販売している同じ日系人もいます。ニームを支柱にすると、試算では全世界で約2000億円も経費が安くなり、そうした面からも大きな利点があると言えます。
良い事尽くめ
 さらに、ニームオイルはアメリカの研究者によると、線虫類をはじめ413種類の害虫を駆除します。それだけの値打ちのあるものです。いろんなところで使われ、野菜や花の栽培に、薬としては高血圧や肝臓などいろんなものに。石けんにも紅茶に入れてもよいということです。にもかかわらず、ミミズやミツバチといった益虫や人間、動物にはまったく悪影響がないのです。薬のような抵抗性ができることもありません。わずかな量で大きな効果が得られ大変経済的です。マスコミでも取り上げられるようになり、ニームオイルは無害で、植物に安全、土壌に安全、環境に安全ということが理解されています。
そこで、私はニームが頭のてっぺんから足の先まで良い事尽くめということで、何か欠点は無いのかと疑問を持ちました。結論的には全く欠点がありませんでした。ただ、忌虫成分が入っているのに菌類が着くというのはおかしいじゃないかと思い、調べたところそれはスス病だったのです。これは害虫類から排出される糞、唾にくっつくもので、二次的に落ちているニームの葉に付くものだとわかりました。
つまり、まったく欠陥がないことがあらためて確認できました。本当にこんなものが世界にあるのかと不思議に感じると同時に、まさにミラクルであると思いました。

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